アメリカの自動車関税で日本の輸出が減少?その裏でインバウンド消費は急増中

アメリカの自動車関税に関連する輸出額の減少と、インバウンド(訪日外国人観光客)による収入増加は、日本経済における2つの異なる動向を示しています。以下にそれぞれを詳しく解説します。

1.アメリカの自動車関税による日本の輸出額の減少

背景

アメリカ政府は近年、「自国産業保護」を理由に一部の外国製品に対して関税を引き上げる政策を取ってきました。その中でも、日本からの自動車および自動車部品は大きなターゲットとなる可能性がある分野です。

影響

  • 関税率の上昇により、日本製自動車の価格競争力がアメリカ市場で低下。
  • アメリカ市場への輸出量が減少し、輸出額が減少
  • 特にトヨタ、ホンダ、日産といった日本の主要自動車メーカーの収益にも影響が出る可能性。
  • 部品メーカー(ティア1、ティア2企業)にも波及し、サプライチェーン全体が打撃を受ける可能性あり。

2.2024年の経常収支(財務省速報値)

財務省が発表した国際収支統計によりますと、昨年度1年間の経常収支は30兆3771億円の黒字となりました。
これは前年から約4兆2,107億円の増加です。主な要因は、海外投資からの収益(第一次所得収支)の増加で、貿易・サービス収支は依然として赤字です。

2024年の経常収支内訳

項目 金額(兆円)
貿易・サービス収支 ▲6.62
第一次所得収支 41.71
第二次所得収支 ▲4.71

第一次所得収支とは

日本の企業や個人が海外に投資して得た「配当・利子・給与」などと、逆に外国人や外国企業が日本に投資して得た収入との差し引きです。

  • 利子:日本企業が海外の国債を保有し、そこから得た利子など
  • 配当:日本人が海外企業の株式を保有し、そこから得た配当
  • 雇用者報酬:一時的な海外労働者が母国に送金する給与など(例:海外駐在員の報酬)

第一次所得収支の利益が使われる先

第一次所得収支の利益が使われる先は、現地での事業拡大、設備投資、研究開発などのために、受け取った利益をそのまま現地に再投資することが多いです。
これは「直接投資に伴う留保利益」と呼ばれ、実際には日本国内に資金が戻ってこないことになりますが、経常収支上は利益として計上されます。

日本の経常収支は黒字でも、その利益の多くは国内経済に直接的な還元がされず、海外に再投資されて国内の景気や消費に波及しづらい構造になっています。

3.インバウンド(訪日外国人観光客)による収入の増加

背景

日本政府は観光を成長戦略の一環と位置づけ、ビザの緩和、観光インフラの整備、プロモーション活動などを積極的に行ってきました。コロナ後のリベンジ旅行の流れもあり、2023年以降、訪日観光客数が急回復しています。

影響

  • 2024年には訪日外国人数が月間300万人を超える月も出てきており、観光業が活性化
  • 外国人観光客による消費支出(宿泊、飲食、交通、買い物など)が地域経済に直接貢献。
  • 特に円安の影響で、外国人にとって日本が「安くて魅力的」な旅行先となり、支出額が増加傾向
  • 地方都市や観光地での雇用創出や新規ビジネスの立ち上げも促進されている。

まとめ:対照的な動きと政策の課題

観点 自動車輸出 インバウンド
傾向 減少傾向 増加傾向
原因 関税引き上げ(保護主義) 円安・政策支援・需要増加
影響 輸出額減少、製造業への悪影響 サービス業・観光業への恩恵

このように、日本経済は「製造業輸出の逆風」と「観光収入の追い風」という構造の転換期にあります。製造業に依存していた成長モデルから、観光やサービス業へのバランスシフトが進む中、政府や企業には両者を総合的に支える産業戦略と地域振興政策が求められます。